京都の伝統工芸の変わらぬ本筋について
京都には、後世に残したい伝統工芸品がたくさんあります。その伝統工芸品を作る
伝統工芸技術は、京都に17ケ所ある世界文化遺産を維持・管理していく為には
なくてはならないものです。
しかしながらバブル以降、着物文化に代表される生活様式の変化や、“使い捨て”という言葉に
象徴される生活思考の変化により、残念ながら京都の伝統工芸品は衰退の道を辿り、
伝統工芸技術を継承すべき職人の数は年と共に減少しています。
一方で一部の若い人を中心に、京都の伝統工芸技術を使って海外に積極的に進出する動きが
活発になろうとしています。それは、ある意味、京都の伝統工芸の期待の星かもしれません。
特にヨーロッパの人達は、日本文化への関心が非常に高く日本文化を受入れようとする人達が
大勢いますから。
しかし、ヨーロッパの文化思考は形(デザイン)から入る為、ややもすれば、従来の和の形でなく、
受け入れられやすい形に変化してしまうこともありえます。
京都には長い間に培われた京都らしさや機能性があり、あまりデザインにこだわりすぎると
本来の京都らしさが損なわれたり、機能性を失ってしまうのではないかと余計な心配をしています。
確かに、京都の文化は変革を繰り返してきたから1,000年以上持ちこたえてきました。
しかし、ある京都出身の作家は、京都の変革の仕方について、次のように述べています。
「青いものを売っていた店が、赤が求められるようになったからと突然に赤を売るのではなく、
紫をつくり、青の客には紫の新鮮さを楽しんでもらい、赤の客には紫の良さを知ってもらうように
してきた」と。
変化には非常に敏感だが、単純に真似るのではなく、本筋をはずすことなく、ひとひねりして
独自色を出してきたのが京都であるようです。
全国でも数少ない歌舞伎や文楽といった舞台衣裳を制作している、京都・北烏丸にある宇野商店は、
新たに弁慶格子の衣裳デザインを使った帆布のトートバッグやポーチ、財布の制作を始めました。
伝統を伝える会社であるからこそ伝統の本筋は変えることなく新たな挑戦をしています。
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